こんにちは!神戸市灘区、六甲道本通り商店街にあります、こころ整体整骨院の竹本です!
今回は「鍼灸で動かなくなった恐い話」をテーマにお話ししていこうと思います。
まず「鍼灸治療で動かなくなった」という話を聞くことはあっても実例を見ることはほとんどありません、なので鍼治療で動かなくなる可能性を考えていこうと思います。
鍼灸治療は副作用がなく安全!と言われていたことがありました。
しかしそれはあくまで「適切な方法で治療行為が行われていれば」の話になります。
実際には鍼灸治療による医療事故は発生しています、鍼灸師の先生はまずこれの発生を避けるために注意を払います。
~~~鍼治療の有害事象~~~
まず初めに鍼治療における鍼治療によって引き起こされる可能性のある有害事象をまとめていきます。
●気胸
何らかの理由で胸腔内に空気が漏れだし肺を圧迫するために空気を吸えなくなる。
原因は様々でそれぞれ名称が違ったりします。例えば、肺疾患などのない細見の若年男性に好発
する”自然気胸”、交通外傷などによる”外傷性気胸”、針穿刺や針生検などによる”医療性気胸”
に大別されます。この中で鍼治療をしたときに発生するのは”医療性気胸”になります。
ではなぜ鍼治療で医療性気胸になってしまうのか?答えは単純で”肺を刺してしまった”または”肺を傷つけてしまった”ことが原因になります。
もちろん鍼灸師の先生はまず肺を避けるように鍼をします、こういった医療性気胸の事故が起こってしまう原因で多いのは”学生バイトに鍼をさせていた”ことが多かったです。
もちろん法律で禁止されていることですのでそういった治療院には行かないで下さい、またそういう所では働かないで下さい。
●折鍼
鍼が折れてしまうことです。昔は埋没鍼と言って鍼を折って埋め込んでしまうことをしていましたが、その鍼が神経を傷つけてしまい麻痺や不随を引き起こしてしまう危険性があります。
また、不注意によって鍼が折れてしまうことがあります。
折鍼の原因も様々で、特に多いのが使い回しをする鍼による折鍼事故です。
こころ整体整骨院ではディスポーザブル鍼という使い捨ての鍼を使用していますが、オートクレーブ滅菌による反復使用を行っている鍼灸院もまだまだ多いです。
鍼を滅菌して繰り返し使用するため鍼を損傷し折れてしまうことが原因になります。
また鍼通電治療では直流電流だと鍼の侵食が起こるため鍼の強度が低下し折れてしまうことがあります。
最近の通電装置は交流電流を使用しているため危険は少なくなっています。
他にも筋肉に力が入り鍼が曲がったりして抜鍼困難(鍼が抜けなくなる)になったときに適切な処置をせず無理矢理抜くなど不適切な処置をした場合にも折鍼が起こってしまいます。
もしも折鍼が起こった場合、鍼の断端の一部が皮膚の上に残っていればそれをピンセットでつまんで抜き取ることも可能ですが、完全に皮下にある場合は最悪の場合手術による除去が必要になります。
鍼を取るだけの簡単な手術に思えますが、髪の毛ほどの太さの鍼をだいたいの場所で探さなくてはいけなくなるので思っている以上に大掛かりな手術になる可能性もあります。
●出血・内出血
鍼が毛細血管に刺さり出血することです。体外に出てくると”外出血”、体内に留まる出血を”内出血”といいます
内出血は青アザができるので顔など目立つ場所に鍼をする場合は初めにその旨を伝え同意書を書いて頂くところが多いと思います。
原因は上記にある通り毛細血管を鍼で刺してしまったことによるものです。
とはいえ毛細血管は避けることができないため内出血が起こってしまうのも仕方ないかなとは思います。
しかし、毎回内出血が起こる場合は乱暴な手技を行ったりしているために毛細血管が傷ついている可能性もありますのでそういった鍼灸師は注意しましょう。
●抜鍼困難 渋り鍼(しぶりばり)ともいう
鍼を刺した後に鍼が回せなくなったり抜鍼が困難になることです。
上記の折鍼の原因のひとつで抜鍼困難にも様々な原因があります。
筋攣縮によって鍼が抜けなくなること
手技で一方向に回旋すると筋繊維が鍼に巻き付き抜けなくなること
患者さんが体を動かした際に痛みが出て反射的に筋肉を収縮したことによるもの
これらが主に考えられます。
一方向への回旋による場合は逆方向に回せば巻き付いている筋繊維がほどけるので抜ける場合が多いですがそれ以外の場合は鍼が曲がっている場合もあるので注意が必要です。
まずはリラックスすることが大切でこれだけで筋緊張が緩和され抜けるようになる場合もあります。
●脳貧血
鍼の刺激により脳の動脈が収縮し脳循環血液量が減少して引き起こされます。
顔が青白くなったり、冷や汗・嘔吐・失神などの症状が出てきます。
特に初めての方がなりやすく緊張や不安といった精神的要因が原因になります。さらに立ったまま鍼をしたり座った状態での鍼は刺激が強いので脳貧血を引き起こしやすいです。
また、患者さんの身体の状態でも脳貧血が引き起こされやすい原因があります。不眠・疲労・空腹などが原因で夜更かしした状態で朝ごはんを食べずにキツめの鍼をしてもらうと脳貧血を引き起こしたりします。
鍼灸師の先生はこれらを考慮して患者さんの緊張と不安を取り除き、体の状態をしっかり判断して適切な体位で施術をする必要があります。
●遺感覚
鍼を刺した時、鍼を入れた後、鍼を抜いたとき、これらの時に発生する痛みや違和感で治療後数時間~稀に数日間痛みが残ることがあります。
これは痛覚神経の多い血管を刺してしまったときや手技による刺激が強過ぎたために起こりやすいです。
これらが起こってしまう原因も様々です。
手技者の技術が不足している、または不要な手技を行ったために過剰に刺激が与えられ痛みが出る場合
鍼尖(鍼の先)の不良、太い鍼を用いた場合
患者さんが体を動かしたことにより鍼が曲がり刺激量が過剰になった
などが考えられます。
技術に関しては練習あるのみです、正しい技術を身に付け最適な刺激量を見極めるのには時間がかかります。
遺感覚が残る場合は痛みの部位を抑えるとマシになるときがあります。
針治療の有害事象をザッと書いてみましたが結構なボリュームになりました(笑)
これだけみてしまえば「やっぱり鍼は怖い!」と思われる方もいるかもしれません、しかしこれらのほぼすべてが鍼灸師が十分に注意し患者さんに声をかければ起こる可能性は限りなく低くすることができることなのです。
~~~鍼治療の衛生面~~~
鍼灸を怖がる患者さんの話でよく「衛生面が心配」と言われる方がいます。
確かに昔の鍼治療は鍼の使いまわしあまり衛生面でよさそうなイメージはありませんでした。
キチンとした鍼灸院であれば使いまわしと言ってもその人専用でキチンと鍼と鍼を置くお皿(シャーレ)をオートクレープ滅菌をして使用していたので問題はありませんでしたが、やはり少しでも楽しようとする人がいるせいか、オートクレーブ滅菌をせずに使用したり落とした鍼をそのまま使用したりといったことがあったのも事実です。
ここから少し鍼の話をしてきます
~鍼の材質・特徴~
現在使用されている鍼の材質には様々なものがあり、それらに利点と欠点が存在します。
●金鍼
金を使用した高価な鍼になります、これを使用する鍼灸院はオートクレーブ滅菌などを使用して個人に対しての鍼を使い回ししている鍼灸院になります。
理由は前記の通り高価だからですね、普段使っている鍼×100本分がだいたい1本の値段になります(笑)
・利点
柔軟性・弾力性に富んでいる、人体組織へのなじみが良い、腐食しづらい
・欠点
高価、耐久性は低い
刺激や腐食しづらいということは良く金鍼ですが治療効果の違いとしてはあまり話を聞きません。
一度ステンレス鍼を使って治療している方に金鍼を使用し治療効果の違いなどを調べるのも面白そうですが金額がとんでもないことになりそうです(笑)
●銀鍼
金に続いて銀の鍼です。こちらも使い回しが多いのではないでしょうか。
・利点
柔軟性・弾力性に富んでいる、人体組織へのなじみが良い、金鍼に比べて安価である
・欠点
酸化しやすい、腐食しやすい、耐久性に劣る
金に比べて安いこと以外は基本的に金の方が良かったりします。
さらに酸化・腐食しやすいということで使いまわして消耗し、折鍼の原因になってしまいます。
●ステンレス鍼
現在使用されている鍼ナンバー1!使い回しも出来ますがディスポーザブル鍼(使い捨ての鍼)にも使用されています。
・利点
刺入しやすく折れにくい、腐食し難い、安い!、高圧滅菌・通電にも耐える
・欠点
他の鍼に比べて柔軟性・弾力性に劣る
現在多くの鍼灸院・鍼灸整骨院で使用されている鍼であり、特にディスポーザブル鍼は使い捨てで衛生面でも安心できます。
さらに使い捨てだからこそ、鍼にシリコンコーティングをして刺入しやすくするといった鍼も出てきています。
ちなみに柔軟性・弾力性がないと刺入の時に刺激が強くなります、それをシリコンコーティングでカバーしているわけですね!
さて、先ほどから使い回しの鍼だとか色々言っていますが使い回しだとどういったことが起こる可能性があるかも見ていきますね
~使い回しの鍼を使用するリスク~
まず初めに、使い回しの鍼は”滅菌”し”その鍼を使用した患者専用”にすることが原則です。
しかしこれらを怠った時に感染症のリスクが出てきます、医療現場で注射針の誤刺による感染が大きな問題になりますよね?あれと同じことです。
主に誤刺による感染は”B型感染ウイルス(HBV)”・”C型感染ウイルス(HCV)”・”エイズウイルス(HIV)”です。
~~~鍼の刺激量~~~
鍼の刺激量は様々なことで変わってきます。鍼の太さが太くなれば刺激は強くなり、逆に細くなれば刺激は弱くなるといった形です。
刺激量は多すぎると上記にありますように脳貧血・遺感覚などを引き起こします、しかし弱すぎると効果を感じられなかったりと調整が難しいところです。
ここで毎回適切な刺激量を出せるかが鍼灸師の技量になってくるわけですね。
~刺鍼中の手技~
鍼を目標の深さまで刺して抜くといった単純なものから他の刺激を加えるものまで、種類は様々ですがよく使われるものと抜鍼困難になる可能性のある手技を簡単に解説していきます。
・単刺術
鍼を目標の深さまで刺入したらすぐ抜くといった一番基本的な手技になります。
刺激量:きわめて弱め
・雀啄術
鍼を刺入するとき、または刺入してから鍼で啄む(ついばむ)ように上下に進退させる方法です。
刺激量:上下動の速さと深さ、時間などにより弱~強と調節可能
・置鍼術
鍼を刺入後しばらくの間とどめておき、生体の反応を見きわめた後抜鍼する方法。
15分~20分が目安で多くの鍼灸院で使われる手技です。
・振せん術
目標の深さまで鍼を刺入した鍼の柄の部分をつまみ、鍼を振動させる方法。
・旋撚術(せんねんじゅつ)
刺入時または抜鍼時に鍼を左右に半回転ずつ交互にひねりながら行う手技。
・回旋術
右または左のどちらか一方向に回しながら刺入、または一定の深さでこれを行う方法。
抜鍼時に回した方向と逆に回しながら抜いていく。これをしないと抜鍼困難になる可能性があります。
・鍼尖転移法
鍼尖を皮下にとどめ、押手・刺手とともに皮膚を縦横、または輪状に異動させ皮下に刺激を与える方法。
恐らく手技の中で最強刺激です、使ってるところをほとんどみたことがありません。
・乱鍼術
一定の方式に従わず数種類の手技を併用する方法です。
例えば 刺入時に旋撚術→雀啄術→置鍼術→振せん術→抜鍼時に旋撚術
といった形です、これは治療院や個人でも違う場合があります。
これら以外にも手技はまだまだあるのですが数が多いのでここらへんにしときますね。
さて、では少しまとめていきますね。
「鍼灸治療によって体が動かなくなる」ことは十分に起こりえることだと思います。
特に”折鍼”の場所が神経に近い場合、鍼が取り出せなくなり神経を傷つけ痺れが残ったり動かなくなる。
また鍼を取りだす手術の際誤って神経を傷つけた場合でも”鍼灸治療が原因で手術が必要になり結果的に神経を傷つけた”ということになると思います。
ほとんどの場合起きない事故ですが、もしも事故が起こった場合に適切な処置を施すことのできる鍼灸師であれば安心して受けれるのではないでしょうか?